著者
早川 健 小林 裕直
出版者
山梨大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = Journal of Applied Educational Research (ISSN:18816169)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.289-304, 2022-03

評価は指導を修正し改善するためのものであるととらえ,指導計画を修正・改善するための具体的な方法を明らかにすることが本研究の目的である。先行研究をもとに,指導から評価へそして評価から再指導へと進める授業改善へ向けた教師の活動として,「①停滞箇所を特定する」「②その原因を探る」「③再指導の方針を探る」「④再指導を実践する」ことに着目した。そして,子どもの実態を教師が解釈・判断する活動が指導計画を修正する際に重要であることが明らかとなった。これらをもとに算数科の実践授業を実施した。2位数×1位数の筆算形式を導く算数授業で,被乗数を分けて考えるアイデアが生まれるがその分け方を巡って想定外の方向へ授業が進み軌道修正をすることとなる。このときの修正指導の分析をとおして,指導の結果としての評価に基づいた再指導の具体的な方法を明らかにし,授業改善への示唆を得た。
著者
古家 貴雄
出版者
山梨大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = Journal of Applied Educational Research (ISSN:18816169)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.169-178, 2021-03

戦前の教員養成機関において,学生に教師の教職的教養教育を提供したほぼ唯一の学校である東京高等師範学校の附属中学校の教員スタッフであった村岡博に焦点を当て,彼の英語教育観や英語教育実践について述べていきたい.そのために彼の教育や教員生活のキャリアの概略の説明から入り,彼の学校で実践されていた新教授法の論考,初学年の英語教育導入に関する論考等について見ていきたい.その中で述べられた村岡の英語教育に関する指導観や英語教育における特定なテーマに関する考え方について,その特徴を考察してみたい.
著者
原 瑞穂
出版者
山梨大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = Journal of Applied Educational Research (ISSN:18816169)
巻号頁・発行日
no.26, pp.179-192, 2021-03

大学のキャリア教育で使用している自己評価を目的とした振り返り方法は多様である。本研究では、同じプログラム内容の授業で、取り扱う振り返りの方法によって学生に及ぼす影響が異なるのかどうかを検証した。本学では平成 28年度以来、成績に関する評価要件である課題レポートと評価に直接関係しないOPPA(One Page Portfolio Assessment)を振り返りに使用しており、本研究では、「キャリア形成科目N」を受講した平成 28年度と令和元年度前期に学生を対象に、OPPAの使用の有無によるクラスごとの学生の変化を調べた。その結果、OPPAを使用したクラスは、自尊感情、自己効力感、二次元レジリエンス、進路選択に対する自己効力で授業後に効果が見られた。一方、OPPAを使用しなかったクラスは、自己効力感のみに効果が見られた。他に、OPPAを使用しなかったクラスの自尊感情と進路選択に対する自己効力が低下したことが、OPPAを使用したクラスと異なる点であった。これらの結果から、OPPAの使用は学生に学ぶ意味を考える機会を与えることによって授業に真摯に取り組む姿勢が生まれ、結果として授業効果が得られることが示唆された。
著者
尾藤 章雄
出版者
山梨大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = Journal of Applied Educational Research (ISSN:18816169)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.73-80, 2021-03

山梨大学の教員養成課程に入学した大学 1年生が、我が国の都道府県の名称と位置をどの程度正しく認知しているかについて 2016年の山梨大学新入生 95名を対象に 20府県について検討した。すべてを正答した学生は全体の 21.1%で帝国書院の中学生の47都道府県全部を正答した比率とほぼ同じで、東北、関東或いは四国・九州地方での認知が曖昧になる傾向があった。地方ブロック内で複数の県の位置が相互に誤認される傾向は東北地方と四国地方にみられ、隣接する特定の県とだけ誤認される傾向は関東(特に北関東)と鳥取、島根両県にみられ、帝国書院の報告で明らかにされた全国の中学生、高校生の傾向と一致した。大学生の正答率の低下は誤答率の増加に繋がり、無答率はほぼ 20%以下と低水準で大学入試を経て県名の認知は高校生よりは大幅に向上している。
著者
服部 一秀 関戸 宏樹
出版者
山梨大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = Journal of Applied Educational Research (ISSN:18816169)
巻号頁・発行日
no.25, pp.37-51, 2020-03

本稿は,歴史教育における博物館展示の新たな活用の可能性について,具体的な学習指導計画「山梨県立博物館が語る歴史」を通して明らかにするものである。この「山梨県立博物館が語る歴史」は,高校歴史教育の導入段階において,パブリックヒストリーとしての身近な博物館の歴史展示についてメタ的に分析検討する学習の一つのモデルである。歴史展示をヒストリー学習において過去の史料として取り扱うのではなく,メタ・ヒストリー学習において現在の歴史叙述として取り扱う。これは,教師の指導のもと,生徒が博物館の歴史展示の構築性を分析し,さらに正当性を吟味検討することにより,その後の学習で歴史展示の有り様や望ましい在り方について取り組んでいくための基本的な理解や視点,意識を身につけるものである。
著者
田中 謙 池田 幸代
出版者
山梨大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = Journal of Applied Educational Research (ISSN:18816169)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.219-234, 2021-03

本研究は、保育所、幼稚園、認定こども園等幼児教育施設(以下、幼児教育組織)の「保育の環境構成」に関する事例分析を通して、幼児教育組織でのカリキュラムマネジメントにおける保育者のナレッジマネジメントの特質を明らかにすることを目的とした。その結果、事例としたM幼稚園の保育の環境構成を考えると、M幼稚園ではカリキュラムマネジメントにより保育環境の再構成を通して保育の質の向上が図られており、このカリキュラムマネジメントは保育者の知識資源を活用していることから、ナレッジマネジメントであったと考えられた。さらに組織でのカリキュラムマネジメントにおける保育者のナレッジマネジメントは、個々の組織のコンテクストに依存する特質を有しており、各組織で蓄積された知識資源を、各園でのコンテクストデザインと融合させる過程が必要であることを指摘した。
著者
佐藤 貴史 服部 一秀
出版者
山梨大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = Journal of Applied Educational Research (ISSN:18816169)
巻号頁・発行日
no.25, pp.227-244, 2020-03

本稿は,小学校社会科の歴史教育において,社会の中の歴史に関するメタ・ヒストリー学習を既存の有り様の分析に留めず,望ましい在り方の判断まですすめることができるか,どうすればすすめることができるかについて,授業開発を通して検討するものである。山梨県内の公立小学校において,明治前期に関するヒストリー学習の指導の後,明治初期における山梨県の誕生に因んで設けられた県民の日に関するメタ・ヒストリー学習の指導を計画・実践し,それを省みて吟味・改善することにより,小学校社会科の歴史教育におけるメタ・ヒストリー学習の可能性を明らかにしている
著者
塚越 奈美 秋山 麻実 志村 結美 川島 亜紀子 小島 千か 渡邊 文代 佐藤 和裕
出版者
山梨大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = Journal of Applied Educational Research (ISSN:18816169)
巻号頁・発行日
no.25, pp.1-9, 2020-03

本研究は,山梨大学附属図書館子ども図書室に利用者はどのような魅力を感じているのかを探るものである。この目的のために,子ども図書室の主な利用者である山梨大学教育学部附属幼稚園児の保護者を対象に,利用状況や利用目的などについてたずねる質問紙調査を実施した。その結果,年中児・年長児の家庭では6割を超える利用があり,利用の主な目的は図書を読んだり借りたりという本に親しむ活動が中心であることが確認された。子ども図書室独自の魅力としては,運営に携わる学生ボランティアとの交流や室内に常備されている折り紙等を使った工作活動が挙げられた。また,子ども同士・大人同士のコミュニケーションスペースとして活用されていることも示され,静かに本に親しむ場でもあり,利用者の交流の場でもあるという2つの機能が共存していることが明らかになった。調査結果を関係教職員と学生ボランティアで共有し,今後の運営の充実につなげていきたい。